中性脂肪はどう変化して消化・代謝される?

中性脂肪に代表される脂質は肥満の要因となるだけではなく、体の中でさまざまに姿を変えて生命活動の維持に貢献しています。
そんな中性脂肪の状況に応じた変化や代謝について見ていきましょう。

脂肪が摂取されて体内に蓄えられるまでの変化

まず脂肪(脂質)について、整理しておきましょう。

脂肪は三大栄養素のひとつで、私たちが体を動かすためのエネルギー源として非常に重要な働きをする栄養素です。
脂肪は作られる過程によって大きく3種類に分けられます。

・単純脂質
脂肪酸とグリセロールがエステル結合することによって作られます。中性脂肪はこれに分類します。

・複合脂質
単純脂質にリンや糖が結合したもので、リン脂質や糖脂質と呼ばれます。

・誘導脂質
単純脂質および複合脂質の加水分解によって誘導されたもので、主に脂肪酸を指します。

今回紹介する中性脂肪は、私たちにも最もなじみのある脂質です。

体内に存在する脂肪の約9割は中性脂肪だと言われており、内臓周りについた中性脂肪は内臓脂肪、皮膚の下についた中性脂肪は皮下脂肪と呼ばれていますが、私たちが体を動かすためのエネルギー源としてとても大切な役割を担っています。
車で言うガソリンと同じような役割を果たすと考えたらいいですね。

それでは摂取された脂肪の変化を説明していきます。

摂取された食品に含まれる脂肪の多くは中性脂肪の形をしています。
体内に入ると十二指腸で乳化され、膵臓から分泌されるリパーゼによってモノグリセリド、脂肪酸、グリセロールに分解されます。

グリセロールは水に溶けやすいため小腸上皮細胞から直接吸収されますが、モノグリセリドと脂肪酸は胆汁酸によってミセルと呼ばれる小さい分子に取り込まれてから腸管に吸収されます。

小腸上皮細胞に入った乳化物はタンパク質と結合してカイロミクロンに変換されます。
使われなかった脂質は中性脂肪のまま、体内に蓄えられます。

エネルギーとして使われるまでは皮下脂肪や内臓脂肪として体内に留まり続けますから、動くことが少ない(エネルギーの消費が少ない)のに脂質を摂取しすぎるとどんどん中性脂肪が溜まっていき、太ってしまうのです。

中性脂肪が変化してエネルギーが産み出されるまで

体内に蓄えられた中性脂肪は、そのままにしていても消費されません。

中性脂肪をエネルギーとして利用するためには遊離脂肪酸という形に分解される必要があります。
分解された遊離脂肪酸は褐色脂肪細胞と呼ばれる細胞の元に運ばれ、熱となって消費されます。

中性脂肪は白色脂肪細胞という脂肪をため込む細胞の中に貯蓄されています。
中性脂肪はこの中で油滴と呼ばれる組織に包まれています。
この油滴から中性脂肪を取り出さなければ遊離脂肪酸に変換することができません。

油滴から中性脂肪を取り出すことができるのがインスリン、グルカゴン、ノルアドレナリン、アドレナリンといったホルモンです。
つまり、中性脂肪を遊離脂肪酸に変換するためにはホルモンを働かせなければいけません。

これらのホルモンを分泌してやるためには中程度の運動を行うことが必要です。
その運動に適しているのが有酸素運動とされているため、有酸素運動には脂肪燃焼効果があると言われているのです。

また、細胞の中に存在するミトコンドリアの量を増やすことでより効率的に有酸素運動を行うことができるため、エネルギー代謝が上がります。
ミトコンドリアは体がエネルギーが必要だと判断すると増加するため、キツめの有酸素運動や寒いところでの運動、プチ断食などで効率的に増やせすことができ、中性脂肪の減少につながります。

中性脂肪のリポタンパク質への変化とそれぞれの役割

中性脂肪は脂です。血液は水分ですから、脂と水ははじき合ってしまうため脂のままだとうまく血液中に入り込むことができません。
中性脂肪はアポタンパク質と結合することでリポタンパク質に変換され、血液に乗って全身に作用することができるようになるのです。

リポタンパク質には粒子の大きさや比重の違いによって4つに分けられます。

・カイロミクロン
腸で吸収した脂質を肝臓へ運びます。

・VLDL
超低比重リポタンパク質と呼ばれ、肝臓から抹消組織まで脂肪酸を運びます。

・LDL(悪玉コレステロール)
低比重リポタンパク質と呼ばれ、肝臓から抹消組織にコレステロールを運びます。

・HDL(善玉コレステロール)
高比重リポタンパク質と呼ばれ、抹消組織から肝臓へコレステロールを運びます。

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