脂質とは?脂肪とは違うの?
「脂質」とは文字通りにとれば「脂」(あぶら)の「質」の物質だと言えます。脂のいちばんの特徴は水に溶けないこと。水と脂はお互いにはじけ合って分離します。
「脂質」は主に栄養学の分野で使用される用語で、生物の体内に存在している、脂の性質を持った物質のことです。
脂質と脂肪。一般的に馴染みがある言葉は脂肪ですよね。「お腹の周りの脂肪が気になる」とは言っても「脂質が気になる」とは言いません。
インターネット上でもさまざまな解釈が見られます。Wikipediaでは両者の定義が明確ではないという旨の記述があります。実際、脂肪も生体内の脂分のことを指すので、脂質と同じ意味で使われる場面が大部分で不都合も特に起こらないでしょう。
しかし、このサイトのテーマである「中性脂肪」という言葉があります。「脂肪」と何気なく言ったり書いたりしているときでも、それは「中性脂肪」を意味していることが多いのも確かです。
中性脂肪は下のページでも説明しているように、脂質の一種であるという位置付けです。
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回りくどくなってしまいましたが、以上のことを考え合わせると
ただ厳密には脂肪(中性脂肪)は脂質の一種で、分解されてエネルギーを生み出す機能を持っており、タンパク質や炭水化物と並んで体を構成する大切な物質である。
ということになります。
なお、英語では
脂質 lipid
脂肪 fat
ですが、アメリカの食品栄養表示では「fat」が使われています。
中性脂肪を表す「TG」(triglyceride)が使われることもあります。
脂質の種類
上記のように脂肪を狭義の意味でとらえると、脂質には次の4種類があると言えます。
中性脂肪、コレステロール、リン脂質、脂肪酸
それぞれ別ページで詳しく説明しますが、ここでは概略と果たす役割を簡単に書いておきます。
中性脂肪
脂質の中では中性脂肪の割合が最も多く、安定している状態のものです。主に血液中に存在しますが、皮膚の下にたまる皮下脂肪や腸などの内臓脂肪に形を変えて蓄えられることもよくあります。
体内でエネルギーが必要になったとき、血液中の中性脂肪が分解されてエネルギーの元となる物質を産出します。
コレステロール
よく耳にするコレステロールも、油分の性質を持った脂質の一種です。
肥満の原因とされて評判がよくないコレステロールですが、体を形作っている一つ一つの細胞を覆っている細胞膜や、健やかに生きていくために必要不可欠なホルモンはコレステロールが存在するからこそ作られています。増えすぎず減りすぎず、バランスが重要になってきます。
リン脂質
リン脂質もコレステロールとともに、細胞膜を形成する主成分です。
また、体の各部位で受けた刺激をシグナル信号として脳に伝えたり、逆に脳からの指令を各部位に伝えたりするときの細胞間を信号が通る仕組みにも、リン脂質は大きな役割を果たしています。
脂肪酸
脂肪酸は脂の性質を持った酸のことで、中性脂肪もコレステロールも脂肪酸から合成されて作られています。中性脂肪からエネルギーが作られるにはグリセリンと脂肪酸に分解されて、その脂肪酸がエネルギー物質に変わっていくことで達成されます。
動物性の脂肪に含まれる飽和脂肪酸と、植物の油分などに含有されていることがほとんどである不飽和脂肪酸に分類されます。
脂質を多く含んでいる食品
脂質が多い食品はなんとなくイメージできますが、文部科学省が実際に調べて公表されてる数字があります。そこからデータを拾ってみましょう。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂) 脂肪酸成分表編:文部科学省
第2章 第1表 可食部100 g当たりの脂肪酸成分表(脂肪酸組成表)より
※タイトルは「可食部100 g当たりの脂肪酸成分表」となっていますが、脂質のグラム数も挙がっています
100g当たりの脂質が100g、すなわち100%が脂質のものがあります。それは
オリーブ油、とうもろこし油(コーン油)、ひまわり油、大豆油、なたね油、など
これらは単体では食されないものの、サラダや揚げ物、スナック菓子等によく使われています。
また、ラードも100%脂質、ラードの代用とされるショートニングは99.9%です。
牛脂は99.8%、ぶたロースは78.3%、和牛のリブロースは78%、マーガリンやバターも80%台です。
ここらへんはイメージ通りですね。
意外なところではマカダミアナッツが76.7%、ピーカンナッツ(ペカンナッツ)が73.4%、ヘーゼルナッツが69.3%と、ナッツ類の脂質成分が高いことです。アーモンドも54.1%あります。
乾燥卵黄が62.9%、あゆの内臓が55%、ごまが54.9%というのも想像以上かもしれません。
脂質は人間の体には必要な成分ですが、摂取しすぎると肥満の原因にもなります。これらはおいしいものばかりですが、食べ過ぎには注意しましょう。